――今回、岡崎智弘さんがゲスト審査員として参加されますが、岡崎さん自身や作品の印象を教えてください。

去年、亀倉雄策賞の準備で岡崎さんと関わりました。途中経過を見せてもらったり、一緒に新潟の展示に行ったりするなかで持った印象は「迷わない人」です。提案を共有するときのポジティブなパワーがすごく強くて、みんなに輪を広げていくというか、それに乗っかると素敵な世界が見えるようなイメージでしょうか。一人で黙々と作っている印象が強かったのですが、会ってみると周りを巻き込んでいくパワフルな人だと感じます。「これ良いでしょう」って目を輝かしながら何かを見つけてきて、それを人に共有する言葉や伝え方を持っていらっしゃいます。

――今回、岡崎智弘さんがゲスト審査員として参加されますが、岡崎さんの作品の印象や、審査員として期待することはありますか?

グラフィックの業界だけでもないですし、マルチタレントでカテゴリーに縛られない方だから、審査員として適任者だと思います。コマ撮りのすごく細かい動きから見いだした「動くしるし」とでも呼べるものを生み出せる人ですよね。面白いアイデアを生み出して、繊細に動かし、のめり込んで作るさまをリスペクトしています。 こんなことインタビューで言うのもおかしいけれど、お会いした印象はかわいい人ですよね(笑)なんだか漫画チックで、人間受けする方だなと。威圧感を与えず、昆虫好きな少年みたいで、すごく好印象です。審査会で会えるのが嬉しいですし、同時に彼の目にかなうようなものが出てくればいいなと思います。彼がつまらないと言うものは、きっとみんなつまらないと思います。

会わないからこそ伝わること

パンデミック以降、人と会う機会は減りましたが、会話は減っていません。対面で話す方が気持ちが伝わると言われがちですが、僕は最近むしろ逆だなと思っています。会って話すと表情や動作など、すべての態度が見える分、対話自体の内容は薄くなることもある。ショートメッセージやSNSを通じたやり取りでは、たしかに相手がどういう状況にあるのかはわかりません。相槌を打ってくれているのか、どんな表情なのかもわからない。それを僕たちは、メッセージの句読点や、「!」や、絵文字などの些細な表現から推し量ります。そういう小さな、ある意味では容易いコミュニケーションのしるしが、意外と人間の心に響くのだなと感じているんです。

しるされるのはなにか?

このコンペでは毎年手を変え品を変え「しるし」をテーマにしていますが、そもそも「しるし」とはなんでしょうか。人は何をしるすのかというと、突き詰めれば「わたし」なんですね。だから僕は毎年、節目のように「わたし」について考えさせられます。

心を表す解像度

心の世界って、描写の解像度がすごく低いと思うんですよね。ものの形状や機能性の表現に比べて、どうしても自分の心を基準にするからか、ボキャブラリーが少ないものが多い。だから今回の「こころを感じる」は漠然としたテーマだなと思いつつ、心の捉え方の解像度が高まるようなものが生まれるといいのかなと思っています。曖昧な心というものに向き合う意味があるとしたらそこかなと。